第5条 古風な装い・走れる靴で臨むこと

安全のための三原則

ちょっとここで外務省領事局邦人テロ対策室が出している「海外赴任者のための安全対策小読本」について触れさせてください。海外赴任者のためのものですが、ここで述べられている「安全のための三原則」は旅行者にもぜひとも意識していただきたいものです。

目立たない・行動を予知されない・用心を怠らない

字面だけ見ると「ふうん、ま、普通そうだよね」となんということのない原則に思えます。しかしこの意味を正確に把握し、意識しているといないとでは、貴女の身の安全に大きな違いが出ます。

目立たないための出で立ち

きょうび、デリーやムンバイなどの都会では、ノースリーブにミニスカートといった洋装のインド女性もたくさんいます。ボリウッド映画のセレブリティなどを見ても、みなさん自由にファッションを楽しんでいるように見えます。

しかし、あれはインドとはいえ別次元と思ってください。運転手つきの専用車や常に身辺をガードする男性を伴っていない貴女が外国人としてインドを旅するにあたっては、古風にいきましょう。

二の腕、足、胸元の露出はNG

  1. 短すぎない袖、お尻まで隠れ身体の線が出すぎないトップス
  2. 足首まで隠れる透けないボトムス
  3. 胸元を覆うことができるショールやスカーフ

これがもっとも目立たない基本の服装です。インド女性は一枚布を巻きつけるサリーも着用しますが、活動的な日常着としてこの「チュニック、ふわっとしたパンツ、スカーフ」のセットアップを着る女性も多いです。

渡航前に手に入ればベストですし、手持ちの服で工夫してもよいでしょう。インドにはさまざまな人種がいるので、このようなインド的服装であればぱっと見は日本人に見えず目立ちません。

インド女性の鉄板スタイル、チュニック&パンツ&スカーフ。色柄はセレクトするとして、このセットアップでいれば間違いはない

避けたほうがよい出で立ち

胸元が開いて、ぴったりしたTシャツ、スキニーパンツ、または膝下が出るスカート

日本では誰もなんとも思わない服装ですが、こんなファッションは避けてください。胸元やお尻や足を凝視して生唾を飲み込んでいるインド人男性が必ずいます。

インド女性のサリー姿は脇腹が露出します。しかし、胸元、腕、足の露出は伝統的ではありません。伝統的ではない服装はパッと人目を引き、相手に理由を与えることになります。

これまでも何度も述べてきた通り、インド人男性は女性に慣れていません、そして自分の周囲のインド人女性には滅多なことでは手を出せません。

貴女が外国人とひと目で分かったら、隙あらばとターゲットにする輩が必ず出現します。

たとえば人ごみでムンズと胸やお尻を掴んできたり、すれ違いざまに触ってきたりする痴漢がいます。どこに泊まって誰と行動しているか観察してくる輩もいるかもしれません。

目立たないのは最大の防御と心してください。

また、胸元をスカーフやショールで覆うのは「きちんとした服装」の条件となります。ずっと巻いているのではないにしろ、寺院など神聖な場所に入るときや目上の人に会うときは、首にグルグル巻きではなく、上記の写真のように前からフワッとかけて胸元全体を覆った状態でいるようにしてください。

基本のセットアップ購入方法

この基本のセットアップは日本の通販などで探す場合は「パンジャビ・ドレス」「サルワール・カミーズ」などで検索してください。この名称はなぜか日本では定着しているのですが、特定の地域や宗教を連想させる言葉なので、インドで探す場合は“Ladies kurta and salwar”(レディース・クルタ・アンド・サルワール)というとよいと思います。

クルタ=チュニック状のシャツ、サルワール=ふんわりしたパンツです。Churidar(チュリダール)というレギンス状のパンツもあります。

現地で購入する場合は、仕立て上りの既製品を売っている店がおすすめです。生地を買い身体に合わせて仕立てるのも一般的ですが、仕立てに時間がかかるのと、腕のよい仕立て屋を見つけるのが意外と難しいので、時間がない旅行者は既製品がよいでしょう。

大きな街にはたいていあり、手頃な値段で生地も縫製もしっかりしているFabindia(ファブインディア)というブランドがおすすめです。

玄関口となることが多いニューデリーであれば、コンノート・プレースAブロックにある店舗が行きやすいです。

Fabindia
Connaught Place店
A-1 , Hamilton House,
Connaught Place,
New Delhi-110001
電話: +91-011- 43048295/96
営業時間: 10:00 am から 8:30 pm、年中無休

あなたはいつも見られている

これまで述べてきた通り、インドにおける外国人女性は、存在そのものが目立ってしまう運命にあります。そしてインドはおそるべき口コミ社会です。

あそこに泊まっている日本人は明日どこそこへ行くそうだ

そんな情報が茶飲話として貴女が接する人から人へと伝言されていきます。ほとんどの場合は害はない、他愛のない口コミです。けれどひと度、悪意ある誰かのターゲットになってしまったとしたら、貴女の行動は筒抜けになっていると思って間違いありません。

  • その日の予定、翌日以降の予定
  • ホテルの部屋番号
  • 連れのあるなし
  • インドにどれほど慣れているか

そんな情報は、必要な人にだけ、最小限、伝えてください。タクシーの運転手や、会ったばかりの人物に伝える必要はまったくありません。しつこく聞き出そうとする人物がいたらそれは注意すべき相手です。“I don’t know” など、簡単な言葉でいいので拒絶し、以降は目を合わせず、口も開かないことです。

逆に日本にいる友人や家族には、移動の節目節目で無事を伝えるといいでしょう。空港に着いた、ホテルに着いた、明日はここからここに移動するなど、1日1回は連絡をしておくと安心ですし、なにか起きた際に日本側で足どりをつかむ手がかりになります。

全力で走れる靴

およそ冗談のようなアドバイスではあります。インドでは全力で走れる履物を履いてください。

天災、人災、いつどこでなにがあるかわかりません。インドは地震もそれなりにある国です。前項にも書いた通り、国内外の複数の要因からテロの可能性を否定しきれない国でもあります。

テロに対しては国を挙げて取り組んでおり、高級ホテル、ショッピングセンターや映画館、駅、地下鉄といった施設に入る場合は必ず手荷物検査とボディチェックがあります。ここ数年は外国人がいくような場所での目立ったテロは起きていませんが、「用心を怠らない」、この原則を心してください。

テロではなくても、デモや暴動などが起きることが多い国でもあります。万が一そんな非常事態に巻き込まれてしまったときは、可及的速やかにその場を立ち去るしかありません。そしてその場合、いかに素早く行動できるかが肝になります。

その靴を履いて全力ダッシュで逃げられるか? これを基準に靴を選んでください。

ホテルから遠出をしない近場の外出には、少し底があり足首がしっかり固定できるサンダルもよいでしょう。街中も足場が悪いことが多いので安定感も大事ですが、汚水の水たまりや牛の糞などが直に足につかないよう、すこし底に厚さがある履物をおすすめします。

おわりに

どれだけ気をつけたとしても、トラブルに遭うときは遭います。避けられない事象というものは確かにあります。けれど、無防備でいたのか、備えていたのかで、事後の心の整理のつけかたに大きな違いがでます。

私には1%も非はなかった。

なにかが起きたとき、貴女や貴女の友人、家族がこう思えることが、本当に大切なのです。