第4条 むやみに感じよくしないこと

文化の違い

男性の旅行者とは見える風景も人との距離感もまったく違います。正直なところ男性は気楽でいいなと思います。

これは文化の違いなのです。人間や国家の優劣とか良い悪いの話ではありません。くどいようですが、これが嫌なら行かなければよい、そういう類のものです。

ずっと昔、私たちの祖父母以前の時代は違ったのかもしれません。しかし現代の日本人女性は、感じよく笑顔で人に接することを自然と身につけています。

かたやインド人女性は、親族であっても目上の男性には決して表情を崩さず、謙虚で慎み深い態度をとることが伝統的に求められています。ましてや見知らぬ男性に笑顔を見せるなど、とんでもないことです。

「男に向かって微笑んだ=ふしだらだ」と咎められ、罰せられたという話も実際にありました。女性が知らない人に笑顔を見せるのは「よくないこと」という考え方がインドにはあるのです。

だから普通のインド人女性が貴女に最初に接するときは、たいがい仏頂面をしているはずです。機嫌が悪いわけでも、貴女のことが嫌いなわけでもありません。初対面の貴女にいきなり笑顔で接するという習慣がないだけなのです。

外国人向けのサービスが完璧に行き届いた高級ホテルや高級レストラン、外国人慣れしている中上流以上の女性はここでは除きます。

笑顔が生む誤解

本人にその自覚はなくとも、日本人女性はほんとうに感じがよいのです。日本人はなによりも「相手に失礼にならないように」ということが念頭にありますから、言葉が通じない外国だと、言葉の壁があるぶん、よけいにニコニコしている印象があります(だからダメだといいたいわけではもちろんありません!)。

女性の対応の基本が仏頂面という文化にあって、この日本人女性の感じのよさは大きな誤解を生むことがあります。

先に述べたように、ちょっと高級な場所や外国人慣れした中上流の人々は別です。ただ貴女がインドで出会うであろうインド人の多くは「初対面の女性は仏頂面でいるのが当たり前」という文化のなか生まれ育ってきています。

そこで、ニコニコと低姿勢な日本人女性に出会うとどうでしょう。第三条の繰り返しになりますが。

これは天が与えてくれたチャンスだ

神の計らいだ、運命の巡り合わせだ、そんなふうに都合よく解釈するインド人男性がいます。必ずいます。道徳心がないわけではなくて、ちょっとわかりづらいのですが「信仰心がときに都合よく働くこと」があるという話です。

コミュニティ外の外国人旅行者

みなさんご存知のカースト制度。これはヒンドゥー教徒の身分制度であると同時に「同じくらいの財力・同じくらいの教育レベル・似たようなジャンルの職業」の相互扶助コミュニティでもあります。そしてヒンドゥー教徒ではなくても、インド人には必ず自分が属するコミュニティがあります。故郷を離れ都会に働きにきている人々も、そうやって同じ境遇の人々が集まって一定のコミュニティを形成して暮らしています。

そこには厳然たる序列があり、秩序があり、ルールに従わない不真面目な者ははじかれます。社会のインフラが整いきっていないインドのような国で、コミュニティを外れて暮らしていくことは本当に難しいことです。だから男性が、自分の想いだけでちょっと気になる女性におおっぴらに声をかけたりは普通はできません。

では数日だけインドを訪れてすぐに帰っていく日本人女性の旅行者はどうでしょう。

コミュニティ内では女性に対してけっしてできないことを、外国人旅行者なら許されるのではないかと勘違いするのも無理からぬ面があります。だからいいってわけじゃありませんよ、でも世の中「ここで争ってもしかたない」というポイントってありますでしょう、それです。よその国ですから。

基本は仏頂面の塩対応

インドの女性は、一歩家の外に出るとたいがい仏頂面をしています。ニコニコしながら道を歩いている女性はいません。いたとしたら、それはなにかそうすべき理由と目的があります。たとえば、男性に媚びてお金をもらうような生業であったり。

こちらが女性であっても、初対面からすこし時間が経ち、人畜無害とわかるまではけっして笑顔を見せてはくれません。最初に書いたように、よその人間に対しむやみやたらとニコニコしないという不文律のもと育ってきているからです。その代わり、いったん気を許してくれたあとは輝く笑顔をみせてくれたりします。ツンデレです。

日本人女性においても、インド的な不文律に従い、徹底したツンデレを真似したほうが無用なトラブルを招かずに済みます。これを「女性への理不尽な制約」と思うなら行かないほうが身のためです、ストレスたまります。

なかなか難しいかもしれませんが、横柄ではない、横暴でもない、あくまでもフラットでニュートラルな仏頂面を心がけてください。ちょっと微笑んだだけで神の計らいと勝手に運命を感じられてはたまったものじゃありません。

フレンドリー、ただし表面だけ

顔見知りになって多少は親しくしてもいいかな、という相手もいると思います。ホテルの前の土産物売りとか、毎日いく食堂の親父さんとか、何度かお世話になったタクシーやオートリクシャのドライバーさんとか。ずっと仏頂面というわけにもいきません。貴女がよいと思うなら、多少の笑顔はみせてもいいですし、ありがとう、おやすみなさい、そのくらいの挨拶は感じよく交わしてよいでしょう。

ただし、心身ともに、そして金銭面で大きな損をしないように、気を緩めきってはいけません。

なにかの拍子に

  • ボディタッチ(偶然を装うものも含む)
  • 結婚しているか、恋人はいるか聞いてくる
  • 周囲に人がいないとき、どこかへ行こうと誘ってくる

このあたりが出てきたら、仏頂面の塩対応を徹底してください。貴女の年齢も、相手の年齢も関係ありません。50代でも60代でも、インド人男性はとにかく恋愛に耐性がありません。突然、気の迷いが出てしまうとか、ロマンスへの憧れに目覚めてしまうことが、十分にあり得ます。

それでも引かず続けてくる相手には、よけいなことをあれこれいう必要はありません。“No!” “I don’t like it”、そんな簡単な言葉でよいのです、静かに、きっぱりといいます。目ヂカラに自信があれば睨みつけてもいいですが、そうでない場合は決して目は合わせないことです(負けます)。

ヨボヨボのおじいさんならともかく、力で勝てなさそうな相手と、ほかに誰もいない場所で絶対にふたりきりになってはいけません。

ホテルの部屋という密室

貴女がひとり旅であったり、ひとりで部屋にいるときに。

チェーンキーがない部屋に誰か男性が訪ねてきたとします。ルームサービスなり、レセプションからのお使いだったり。

そんな場合は、いったん廊下に出て、廊下でやりとりしてから相手を見送り、部屋に戻り鍵をかけましょう。ドアを開けたまま室内から対応すると、部屋に押し入る機会を与えます。

チェーンキーがある場合、かけたまま済む用事ならそのままやりとりしてください。ルームサービスなど室内に入る用事の場合は、そこそこレベルの高いホテルではボーイはドアを開放したまま部屋に入ってきます。そのとき貴女は入れ違いに廊下に出て、入り口で中を監視しつつ待機していてください。ボーイの用事が済んで外に出てきたら、見送ってから室内に入るようにします。

部屋のドアをふさがれては貴女は逃げようがないのです。面倒かもしれませんが、そういう習慣を身につけてください。

貴女が悪いわけではありません。ただし後悔は先に立たないもの。理由を与えてしまうことによって、なにかあれば貴女はきっと自分を責めることになります。そうならないための自衛策がとても大事ということです。